松下耕(1962–)/男声合唱ピース「ほらね、」

作詞:伊東恵司(1967–)

初演 2014年12月14日 明治大学グリークラブ第63回定期演奏会にて、作詞家が指揮で参加。

「ほらね、」はカワイ出版の『「歌おうNIPPON」プロジェクト』という企画により誕生した合唱曲の中の一曲である。このプロジェクトは「東日本大震災で大きな被害を受けた方々にエールを届けるために全国の人の歌声をネットで送ろう」という趣旨のもので、既存の楽曲のアレンジや、相澤直人氏や木下牧子氏、信長貴富氏など様々な作曲家の方々による新曲が無償で提供された。現在もたくさんの団体が演奏した映像や音源が公開されている。

「ほらね、」の楽譜は混声3部版・混声4部版・同声3部版で作成され、2011年7月27日に同プロジェクトのサイトに公開された。その後、2014年に明治大学グリークラブの委嘱によって男声4部版が作成され、翌年の2015年12月に楽譜が出版されている。明治大学グリークラブによる初演の際には、作詞者である伊藤恵司氏自ら指揮を振って演奏された。伊藤恵司氏は、女子大学女声合唱団が今回演奏会で演奏する「夢」の作詞者である、みなづきみのり氏と同一人物である。

作曲者である松下耕氏は「合唱に普段接していない子どもたちでも、歌うことで人と人がつながっていけることを実感してほしかった」という希望から、学校のクラス合唱向けに作曲したと混声合唱版で語っている。この曲は歌っているというよりも、語りかけるような明るい曲調になっており、「ほらね、みんな一緒にいるから一人じゃないよ」と励ましてくれる曲である。全パートそろって歌う部分が多く、「一人じゃない」という歌詞を繰り返し歌う構造になっている。そして、歌詞の終わりの部分では「うたはそばにいる大切なともだち」と、思い出や微笑みの詰まっているうたと一緒にいることができる喜びを表している。曲の最後にfffという最も大きい強弱記号を用い、感情をヴォカリーズで表現して締めくくられている。


参考文献

文責:バス4年 宮崎雄希