エリクス・エセンヴァルズ(Ēriks Ešenvalds, 1977–)/マイ ソング

作詞:ラビンドラナート・タゴール(Rabindranath Tagore, 1861–1941)

初演 2014年7月 世界合唱大会2014年大会にて、作曲者もピアノで参加。

エセンヴァルズ作曲のこの曲は、2014年にラトビアの首都リガで開催された世界合唱大会(World Choir Games)の公式アンセムとして書かれたものである。世界合唱大会とは、世界的なアマチュア合唱団の大会である。2年に1回世界各地で開催されており、過去にはブレーメン(ドイツ)・ソチ(ロシア)、アジアでも釜山(韓国)や廈門市(中国)などで開かれている。リガで開かれた2014年には、73の国から460もの合唱団が参加し、延べ27,000人がパフォーマンスを披露したと言われている。

エセンヴァルズはラトビア出身の作曲家で、主に合唱曲での評価が高い。1977年に生まれ、ラトビア音楽アカデミー等で学ぶ。自身も約9年間合唱団「State Choir Latija」に所属していた。2005、2007年、2015年にLatvian Grand Music Award 作曲賞を受賞。

エセンヴァルズは、作詞家であり音楽家である英領インド出身のラビンドラナート・タゴールの詩を歌詞として使用する。タゴールは1861年、英領インドにて15人兄弟の第14子として生を受けた。彼の最も有名な作品は『ギタンジャリ』であり、この作品で彼はヨーロッパ人以外で初のノーベル賞受賞者となる。ベンガル語で教育を受けてきたため、多くの彼の著作物がベンガル語での作品だ。彼は1909年に出版したベンガル語の詩『おさなご』から40詩篇を選び、自らの英訳によって『三日月』を1912年に出版した。今回演奏する『マイ ソング』は、この詩集に含まれる作品である。
『おさなご』を出版した際、タゴールは何人もの愛する人との別れを経験する。1902年に妻ムリナリニ・デビを亡くしたのを皮きりに、翌年次女レヌカ、1905年に父デベンドラナート、2年後には次男ショミンドラが11歳にて死去。『おさなご』はこのような別れやその悲哀を基に描かれている。

世界合唱大会の公式アンセムとして、2014年大会の閉会式にて初披露された。当時はエセンヴァルズ氏自身がピアノ伴奏を務め、前奏のメロディーはサックスソロによって奏でられた。曲はハ長調のユニゾンから始まり、嬰へ長調、ロ長調へとメロディーが変化していく。大団円の中終焉、かと思いきや冒頭のイントロがソプラノによって再現され、「私の亡きあとも歌は貴方の中にある」という思いを優しく歌う。


参考文献

文責:ソプラノ4年 渡邊あかり