マックス・ブルッフ(Max Christian Friedrich Bruch, 1838–1920)/ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26 第3楽章

作曲 1866年 1868年に改訂
初演 1866年
4月24日
作曲者の指揮によりコブレンツにて
(ヴァイオリニスト:オットー・フォン・ケーニヒスロウ)、
改訂版は1868年1月7日、ブレーメンにて
(ヴァイオリニスト:ヨーゼフ・ヨアヒム)

マックス・ブルッフは1838年にケルンに生まれたドイツの作曲家。母親がソプラノ歌手だったこともあり、マックスも幼少期から音楽理論や作曲、ピアノを習い、その才能を開花させた。1858年頃から指揮者や作曲家、音楽教師としてドイツやウィーン、リヴァプールなどで活躍。1893年にはケンブリッジ大学で名誉博士号を授与される栄誉を受けた。1920年にベルリン郊外で死去。マックスは民族音楽に興味を抱いており、様々な国の民族的素材が彼の音楽に取り入れられている。民族音楽からにじみ出る叙事詩的表現と豊かな旋律が彼の音楽の特徴であり、マックスはロマン派を代表する作曲家といわれている。今日では「ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調」によって、日本でもその名を目にすることが多い。

ヴァイオリン協奏曲第1番はマックスがドイツのコブレンツで音楽監督の職に就いていた際に作曲された曲である。同地においてマックス本人の指揮によって初演された。初演は好評だったものの彼は曲の出来に満足しておらず、友人でヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムの助言の元で1868年に改訂、同年にブレーメンで改訂版の初演をおこなった。以降この曲が演奏される際は、この改訂版が用いられている。

この曲は元々「幻想曲(Fantasia)」という題が付けられていたが、ヨーゼフの助言によって「協奏曲(Konzerto)」へと題が変えられた。それに伴って第1楽章も「ファンタジーへの序奏(Introduzione-Fantasia)」だったものが「前奏曲(Vorspiel)」へと改題された。このことから曲のメインは第2楽章だということがわかる。協奏曲には珍しく第1楽章の冒頭オーケストラの序奏は非常に短く、すぐに独奏ヴァイオリンの演奏が始まる。語り掛けるかのような冒頭から次第に華やか且つ荘厳な旋律が現れ、最後は冒頭のメロディが再度現れて第1楽章が終結する…かと思いきや、穏やかで柔らかい第2楽章(Adagio)へとそのまま移行する。美しく抒情的な第2楽章が終結し、静かに期待感を煽るような、そして第3楽章の主題を予測させるようなオーケストラの序奏で第3楽章「最終楽章(Finale)」が始まる。

第3楽章(Allegro energico 急速に力強く ト長調 2/2拍子 ソナタ形式)

energicoの演奏指示があるように、メロディも非常にエネルギッシュで力強い第3楽章は、第2楽章の雰囲気とは対照的。第一主題は独奏ヴァイオリンによるダブルストップの連続で活気が生まれ、第二主題は伸び伸びとした美しいメロディが演奏される。テンポが自由に揺れるのが第3楽章の特徴で、ソリストや指揮者の意図によって表現が様々であることも、この曲を聴く際の注目ポイントである。ジプシーの雰囲気をも感じる第3楽章の末尾は「Finale」の名にふさわしく、プレスト(急速)で生き生きと熱情的に曲が結ばれる。


楽器編成

フルート 2 ホルン 4
オーボエ 2 トランペット 4
クラリネット 2 ティンパニ
ファゴット 2 弦五部
独奏ヴァイオリン

参考文献

文責:ヴァイオリン4年 中村美月